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2.雨の2学期〜地球屋でカントリーロード

(2004/04/18更新)
このコーナーは製作者の主観による解釈です。あくまで参考程度に受け取ってください。
本当は、あなた自身の感じる解釈が一番正しいのですから。

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雨の2学期(1) (1999/01/22)

 雨の降りしきる朝、母の朝子が「や〜ねぇ、新学期だっていうのに雨ばっかりで」と言うと、雫は「文句言わない、あなたは好きで勉強してるんでしょう。しっかり、勉強しなさい」と言います。朝子は大学へ向うようです。

 大学は、一般の学生にとっては、小学校、中学校から続く、強制的に勉強させられる教育課程の一つとしてとらえられています。そのため、学生はひたすら卒業を目指して単位をとることを目的とします。勉強しようという意欲はほとんどありません。
 しかし、社会人を経験すると、経験を基にした知識欲求が出てきて、勉強するために大学へ行くようになります。今度は自分自身に目的があるため、大学は本来の勉学の場として利用されます。雫の母、朝子は雫の嫌味?に対し「ま〜かしといて〜」と言っていますので、大学へは自分の意思による目的があって行っていることが判ります。朝子は社会に出て思うところがあったことと、子供が手のかからない年頃になったということで大学へ入ったと考えられます。

 この場面の雨は、秋雨前線によるものでしょう。一雨ごとに涼しくなる雨ですね。

雨の2学期(2) (1999/01/22)

 雫は階段の上で夕子と落ち合います。夕子は「毎日テストばっかりね」といい、雫は「毎日なんかかんかあるね」といいます。さすがに受験が近いだけにテストが多いようです、雫の言動からみて進路相談なども頻繁だと思われます。

 雫は夕子がラブレターをもらったことを気にかけ「返事した?」と聞きます。夕子は断ることを決めたようです、やはり自分の問題として自分で判断を下しました。夕子は「やっぱり好きな人がいるのだし、相手にも失礼だから中途半端なつきあいは出来ない」と考えたのでしょう。
 ところで、そのラブレターを出した相手は、夕子に夏休み中に何も言わなかったことが致命傷となったのではないでしょうか。夕子は元々気弱な上に迷っている感じがあったので、もう一押しすればとりあえずカップルになれたかも知れません。

 雫は杉村を見付け、大きな声で呼びます。夕子は赤くなってうつむいています。雫はイタズラっぽく笑っていますので、わざと杉村を呼んだと考えられます。人の恋愛話を聞いていると楽しいものでソワソワしてきます。本人は悩んでいるのに聞いている方は楽しくなって、つい、応援ついでにイタズラもしたくなります。

雫のちょっかい (1999/01/24)

 学校のテストが終わると、クラスはざわめき休み時間に入ります。
 この時のテストは時期から考えて中間考査でなく実力テストのようです。夏休み明け実力テストといったところでしょうか。

 杉村はこの時期になっても緊張感がなく、テストに山をかけて解いています、彼はきっと楽天家なのでしょう。このままで大丈夫なのかとちょっと心配してしまいます。この時、杉村は男友達に話す前にいきなり雫に話し掛けており、雫に対して友達以上の関心を持っていることが伺えます。
 一方の雫は、杉村の変わった行動には気が付きませんでした。杉村→夕子という思考が働いています。夕子の恋を成就させたい好奇心があったのでは、気が付かないのは仕方ないとも思えます。

 夕子は、雫が無理やりくっつけようとしたことを怒ります。夕子は軽い気持ちで好きになっているのではないので、そんなに簡単に扱ってほしくなかったのでしょう。今一歩を踏み出せない夕子の性格では、ここで一気に行こうという考えは絶対に起らないと考えられます。

職員室 (1999/01/24)

 雫と夕子は職員室へ立ち寄り、本の寄贈者を先生に尋ねます。この時雫が尋ねた先生は、夏休み中に高坂先生に「ベテランの先生に聞いてみな」というアドバイスを受けていたことから、雫の担任ではないと考えられます。
 この先生は「これ僕も読んだよ、いい本でしょ」と言っていますので、国語の先生の可能性が高いと思われます。

 天沢について先生たちの見解は、以前PTA会長を務めた天沢医院の先生であると言います。そして、同学年に天沢さんの息子がいることが知らされます。すると雫はあわてて職員室を飛び出しました。雫は同学年の天沢をどんな人かと考え、もしかしたらあのヤナやつかも、と考えたのでしょう。もしそうだったら希望が崩れてしまうので、その正体を聞く前に飛び出したと考えられます。この場面でも、雫の中に聖司の理想像があることがわかります。

 ところで、この場面で天沢聖司が末っ子であると言われており、兄弟がいることが示されています。原作では兄がいましたので、ここでも兄がいると考えられます。映画には出てきませんが・・・。

渡り廊下 (1999/01/24)

 職員室を飛び出し渡り廊下まで走ると雫は一息つき、夕子に問い詰められます。すると、向こうから聖司が歩いてきました。雫は気持ちを引き締めて聖司に真正面から向って、横を通りぬけました。聖司は雫に目もくれずそのまま歩いて行きました。

 聖司は、なぜ雫を無視したのでしょうか。聖司は雫が好きなはずですから、出会ったならなんらかの反応を示すはずです。
 聖司はこの時、それどころでなかったと考えられます。聖司の後ろに付いて歩いてきたのは、実は聖司の父、天沢航一なのです。これは映画の中ではわかりませんが、資料にはキャラクター設定がなされています。この時、聖司とその父親は、聖司の進学問題について話し合うために学校へ来たと考えられます。聖司は父親と対立しているだけに、変なスキを見せることが出来なかったのでしょう。

 雫は聖司に正対したことについて、「なによ完璧に無視してくれちゃって」「あいつ、ヤなヤツなの。逃げるのヤじゃない」と言っています。雫はヤなヤツとしての聖司を、かなり気にしていることがわかります。恋とは正反対の気になりかたではありますが・・・。
 雫はイヤなことには真正面から対抗して突き進む強さを持ってることが、ここの話し方からわかります。きっと、気の強い姉に対抗して育ってきたことと、過干渉しない親を持つために、甘えられず自分で物事を解決しなければならなかったことにより、自然と身についてきたのでしょう。

保健室 (1999/02/14修正)

 雫達は保健室へお弁当を食べに行きました。友人は夕子から話を聞いて大爆笑します。友人は、雫がこれまで本以外に興味を示さなかったのに、突然異性に目覚めたように見えたのでしょう。雫は「違う!」と言い張りますが、あまり違うようには思えません。
 彼女達はわざわざ、保健室まで来てお弁当を食べていますが、高坂先生と生徒と仲が良いことや、待ち合わせの場所としてもちょうど良く、お弁当を食べる机もあるためと考えられます。普段、保健室登校をしている様子はありません。

 雫はこの保健室でカントリーロードの完成版を持ってきます。この歌詞をみると、雫には、やはりまだ自分の故郷としての場所を客観化できなかったようです。これは雫の「故郷って、やっぱり何かわからない」と言っていることからもわかります。その代わりに一人で生き始めたときの自分を想像し、その時自分がどんな気持ちでいる(いたい)だろうと考えたようです。雫は、故郷は辛くなって逃げ帰る場所でなく、成功して初めて帰る場所だと考えたようです。
 夕子はその歌詞に強い意思を感じたために自分もそうなりたいと感じ「私好き」といったのでしょう。夕子はやはり雫を一番理解する良き友人です。

 夕子はコーラス部の後輩にあげるだけじゃなく、謝恩会で歌おうと提案します。カントリーロードの歌詞は、これから、新しい場所に巣立つ自分達の気持ちを表すにも、ちょうど良いと考えたと思われます。

放課後の寄り道 (1999/01/30)

 放課後、雫は友達の誘いを断って図書館へ向いました。雫が「晴れた、晴れた」と伸びをするところは、本当に晴々として見ていて気持ちいい場面です。
 雫は、ふと立ち止まり地球屋へ向いはじめました。この時の雫は何を考えていたのでしょう。男爵のことがふと浮かんだのでしょうか、それとも、地球屋へのショートカットを思いついたのでしょうか。雫のこの時の表情からすると、男爵のことを考えていたと思う方が近いような気もします。

 地球屋は閉まっていました、中を覗きこむと男爵がいないことに気が付きます。この場面からすると、やはり男爵が気になってきたと考えるほうが自然とも思えます。雫は、看板をみて「西」という苗字をみてヤなヤツのことを考えます、そして、背後を自転車が通ると思わず振り向きます。雫はヤなヤツのことが気になっているようです。前に、さんざんバカにされたのに、突然無視され、聖司の妙な意識を感じたからでしょうか。

夕子の電話 (1999/01/30)

 夕子は杉村に呼び出されたその夜、雫に電話を入れ呼び出します。夕子は泣きながら、ラブレターの返事を杉村が聞きに来たといいます。夕子は、まさか本人でなく杉村が返事を聞きにくるとは思っていなかったはずです。
 夕子としては、まず、気持ちの問題として好きな杉村が聞きにきたことにショックを受けました。曖昧な返事を予定していたのですが、杉村が返事を聞きに来たために、曖昧な返事が出来なくなり、困ってしまったとも考えられます。

 雫は、「杉村は夕子の気持ちを知っているわけじゃない」と夕子を慰めます。夕子は散々考えてわかっているのでしょうが、気持ちが収まらないようです。

 さて、夕子は杉村に返事を聞かれたときに、杉村が好きと言っていたらどうなっていたでしょう。杉村は雫が好きですから、戸惑ったあとに、ゴメンナサイと言ったと考えられます。夕子の気弱な性格が幸いして、この時点で、夕子の気持ちは、逆に望みがつながりました。

杉村の告白 (1999/01/30)

 次の日、学校帰りに雫は杉村に呼びとめられ神社で相談を受けます。杉村は前日からずっと夕子のことが気になっていましたが、さっぱり結論が出なかったようです。
 雫が「この意味わかるでしょう?」というと、杉村は「わかんないよ」と言っていますので、「もしかしたら、夕子は・・・」とは想像もしていないようです。

 雫は、ほとんど勢いあまった感じで「夕子は杉村のことが好きなのよ」といいます。
 杉村は戸惑い、そして意を決して「おまえが好きなんだ」といいました。
 雫は戸惑い、杉村に詰め寄られます。

 雫は、その場から逃げようと、走り出します。
 杉村は雫をつかまえ、「はっきり言え」と返事を求めます。

 雫は「杉村のこと好きだけど、好きとかそんなんじゃ・・・」、「ごめん、上手く言えない」といいます。

 杉村は、雫にはっきりと断られたことを悟ると、静かに立ち去りました。

杉村は男の子で、雫は女の子、友達という枠に収まりきれず意識してしまった瞬間が目に浮かびます。 

杉村の告白の気持ち、雫の、まさか杉村が・・・の気持ち、ご想像にお任せします。
それぞれの気持ちは、この場面の沈黙が全てを表しています。

自己嫌悪〜地球屋へ (1999/02/14)

 雫は家に帰ると、泣き出してしまいます。夕子に気を取られ、杉村の行動に気が付かなかった自分自身への嫌悪です。
 母親が帰ってくると、雫はふと立ち上がり地球屋へと向います。雫は時々頷きながら歩いています、その表情からは何かの意思があることが伺えます。

 さて、雫はなぜまっすぐ地球屋に向ったのでしょうか?涙を流してもまだ気持ちの整理がつかない状態では、普通は外に出ようとは思わないはずです。
 これは地球屋には男爵の人形があるためと考えられます。その理由は少しあとに雫が「会いたくてたまらなくなる」と言っていることからわかります。地球屋に行けば、男爵に会えば冷静になれるかもしれない。男爵と話をすれば何か変わるかもしれない。きっと、そんなふうに考えていたのしょう。

 結局、地球屋は閉まっていましたが、地球屋の前にはムーンが座っていました。雫はムーンに話し掛けますがムーンは相変わらず無視します。しかし逃げることもなく雫の話を聞きます。雫の普段と違う雰囲気を感じ取ったのでしょうか。

 雫は「最近、本を読んでも前みたいにわくわくしないんだ。心のどこかで、こんなことありっこないって誰かが言うんだよね、かわいくないよね」と言います。

 大人になると、本を読んでもなかなか熱中できなくなります。それはそのとおり「こんなこと、ありっこない」です。固定観念というものが出来てくるために、自分の体験や現実にそぐわない話だと、頭の中に矛盾がおこり想像力が働かなくなります。結果、集中力がなくなりわくわくしません。多くの人はこのことを意識せずに成長し、自然に児童小説から離れてゆきます。
 雫はなぜ、この場面で突拍子もなくこんなことを言ったのでしょうか?これには、雫にとって杉村の告白が想像を超える領域であったことが考えられます。
 本を読んでも「こんなこと、ありっこない」となってしまう。しかし、杉村の告白は「こんなこと、ありっこない」を現実にしてしまった。こんなことがありえるかもと、考えらられなくなってしまった自分自身がかわいくない。もっと、純粋な自分でいられたなら杉村にも気が付いただろうし、心の声も聞こえてきたに違いない。
 深層心理では、きっとそう思っていることでしょう。

聖司と雫の会話 (1999/02/14)

 しばらくの間、雫はムーンと共に時間を過ごしていました。夕方、聖司が自転車で地球屋にやってきました。
聖司は不思議そうに二人を見ると、近づいて行きました。雫は聖司に気が付くと現実に引き戻されたようになります。二人はムーンについて話はじめました。

 雫はこの場面で、初めて自分から聖司に話し掛けます。雫はヤナやつであるにも関わらず、まるで昔から知っていた友人のように話しつづけました。
 聖司は、今までまともに口をきかなかった(きけなかった)雫が突然、しかも迫力を持って自分自身に話しているのを見て、真っ赤になっています。聖司が純粋な心を持った男の子であることが、この場面の聖司の表情でよくわかります。

 聖司が雫について、「ムーンが、おまえと・・・?ぜんぜん似てないよ」と急にムキになって否定すると、2人は赤くなってうつむき一瞬の沈黙が流れます。間がもたず2人同時にしゃべりはじめますが、同時にしゃべったため、再び一瞬の沈黙が流れます。
この瞬間、雫も聖司を異性として意識してしまったようにも見えます。ふたりはそれぞれに顔を赤く染めました。
その後、雫は話をがらりと変え、おじいさんのことや男爵のことを話しました。

エンゲルス・ツィマー (1999/02/14)

 雫は、聖司の誘いで男爵を見るために地球屋の裏口に向いました。地球屋の外階段からの外の景色は、日に照らされる街並みを広く見渡すことができ、その光景は空に浮いているようでした。
 雫はここで「高いところ好き」と言っていました。この開けた光景は、杉村ショックをうけた雫の心を少しは開放する効果があったと思われ、雫もしばらく見とれていました。

 中に入ると聖司は1階に雫を案内しました。聖司は男爵を机の上の持ってくると、太陽の光が目にあたるように方向を調整しました。聖司は雫に男爵の目を覗くように誘い、雫が目の中を覗くとその目は宝石のように光って見えました。聖司はこれをエンゲルス・ツィマーといい、職人が布張りの時に偶然付けた傷で出来るといいました。

 雫は、「あなたことをずっと以前から知っていたような気がするの。時々、会いたくてたまらなくなるわ」「今日はなんだかとても悲しそう」と言うと、日が暮れるまで、男爵をずっと眺めていました。
 男爵は雫の心を映す存在のようです。男爵と無言の会話を交わすことは、そのまま自分の心と話すこと、自分を見つめることです。自分を見つめれば、何がどうなったのかを冷静に考えることが出来、気持ちの整理をつけられます。雫は、男爵に会えば何か変わるかも知れないと考え、男爵と話をしていましたが、実は自分自身と話をしたのです。
 ところで、雫は男爵にかなり惹かれていますが、案外、男爵は雫の前世で恋人だったのかもしれませんね。
 

ヴァイオリン工房 (1999/02/14)

 雫が下に降りて行くと、そこにはヴァイオリンを彫る聖司の姿がありました。雫は興味しんしんで覗き込みます。「ヴァイオリン作ってるの?」。聖司は嫌そうに答えます。

 聖司はヴァイオリン作りに熱中していますが、実は雫にも見せたかったのではないでしょうか?普通はいいところをみせようとします。聖司は相変わらず、クールに振る舞っていますが、そのこと自体が照れ隠しであるように見えます。
 雫は、男爵に会えたことでずいぶんと気持ちが落ち着き、普段の自分が出せるようになってきたようです。いつもの、空想世界の表現が出るようになってきました。

 さて、この地球屋はヴァイオリン作りの教室もひらいているということですが、そうすると西老人はかなりの技術屋であり、修理の仕事だけでなく、まるでアンティークのコレクターのようなお店、ヴァイオリン作りに、モダンジャズ。どれもこれもかなりの腕前をもっているようです。西老人は非常にエネルギッシュな人物であることがわかります。

カントリー・ロード・ミニコンサート (1999/02/14)

 聖司は雫に「ヴァイオリンを弾いて」と頼まれると、「お前歌えよ」と言いヴァイオリンを弾き始めました。
雫は曲がなんなのかを理解すると、なんとも言えない表情をみせ、恥ずかしそうにします。それでも、なんとか勇気を出して歌い始めると、次第にリズムを取り始めます。

「ひとりぼっち恐れずに、生きようと夢みてーた。さみしさ押し込めて強い自分を守っていこ。

カントリーロードこの道ずっと行けば、あの街につづいてる、気がする、カントリーロード・・・」

 雫は聖司のあの短い伴奏だけで曲を判断しますが、友人のコーラス部の練習などに付き合っている内に覚えてしまったのでしょうか。また雫が、曲の訳詞をするために原曲をよく聴いていたことも考えられます。このカントリーロードは訳詞と同時に編曲もなされているはずですから、その編曲版が先に出来ていてそれを良く聴いていたことも考えられます。

 聖司は、なぜかこのカントリーロードを知っていました。コーラス部にはあまり関係ないと考えられるので、編曲版カントリーロードは知らないはずです。もし、即興演奏で弾いていたならばその才能はたいしたものです。謝恩会で歌うためにクラスで練習が始まったにしては、前日に出来あがったばかりの訳詞なのでその可能性は消えます。聖司は雫のことがかなり前から気になっていたようですし、雫がカントリーロードの訳詞をしているのを知って、原曲をもとに夏休みからずっと練習をしてきたのかも知れません。

 しばらくすると、地球屋の主人である西司郎をはじめ、その仲間が帰ってきて、いつのまにか演奏に加わりました。雫も次第に緊張が解け、ボルテージもあがってきます。雫は手をたたきはじめ、体全体でリズムをとります。演奏も様々な楽器を持ち替えながら進められました。

「カントリーロードこの道ふるさとへ続いても、ぼくは行かないさ、行けない・・・カントリーロード

カントリーロード明日はいつもの僕さ、帰りたい帰れない・・・・・・さよならカントリーロード」

 西司郎達は、カントリーロードを知っています。彼らはかつて、日本でカントリーロード(オリビア版)が流行った時代を知っていますし、モダンジャズなど楽器も趣味であるので即興も出来ると考えられます。また、聖司が練習しているのを聞いて自分達も密かに練習していたことも考えられます。

 このシーンは前半のクライマックスになります。また、当初この映画最大のポイントであったので、その迫力はすばらしいの一言です。

天沢聖司の正体 (1999/02/14)

 演奏が終わり、それぞれが拍手で称えあいました。雫は「月島雫です」と自己紹介しました。西老人の友人が「聖司君にこんな可愛い友達がいるとはねえ」と言うと、雫は聖司に「あなたもしかして、天沢聖司?」と聞きました。聖司は「あれ、言ってなかったっけ」と答えます。雫は「ひどい、不意打ちだわ。洞窟の生き埋めよ。空が落ちてきたみたい」、聖司は「何バカなこと言ってるんだよ」としばらく口喧嘩していると、西老人達は大声で笑いはじめました。

 ようやく天沢聖司の正体がわかりました。聖司は「あれ、言ってなかったっけ」と言いましたが、聖司としては雫のことをいつも考えていて、いつのまにか知り合いのつもりになっていたと考えられます。

 雫の頭の中には「やさしい、静かな人」という天沢聖司の理想像があったことがようやく判明しました。

ところで、このシーンの言い合いは何度見ても笑ってしまいます。西老人みたいに、思わずプーッです。

満天の星空・帰り道 (1999/02/14)

 帰り道、その道沿いからは、遠く杉の宮の繁華街が見え、空には満天の星空が広がっています。

 聖司はイタリアへ行きたいと、雫に打ち明けます。雫は聖司が高校に行かないと知って驚きます。雫は「すごいね」と答えていますが、雫は自分はどうなのか考えるだけで精一杯で、返事は生返事になっているように感じます。

 雫は、理想の天沢聖司像がなんてことはない聖司なってしまいがっかり?している時に、聖司にこの話を聞かされました。そして、天沢聖司は再び自分より遥か上を行く理想像になりました。今度は自分の勝手な想像による理想像でなく、現実として存在する理想像です。この現実の理想像は雫に大きな衝撃を与えました。「自分はこのままでいいのだろうか、自分のやりたいことってなんだろう」。雫はずっと考え続けます。家に帰っても姉に話したりしました。姉は「それを探すために大学に行っているの」と答えました。

 さて、自分のやりたいこと。これは、いったいどんなものなのでしょう。とりあえずテレビを見たい、なにか食べたい。実はこれも自分のやりたいことです。これはすぐに実現してしまいます。すると、次にやりたいことを探しはじめます。私たちは普段から、常に自分のやりたいことを見付けだし実行しています。しかし、この物理的に何かを得るということは、それが達成された時、一時的にしか満足を得ることはできません。その後には虚無感だけが残ります。

 聖司は一流のヴァイオリン職人を自分のやりたいこととして見定めました。ヴァイオリン職人は終わりがある仕事ではありません。常に最高峰を目指しますが、最高峰という客観的基準はなく、そこには常に改善の余地が残ります。アラは探せば探すだけ見付かります。つまりは自分に妥協しないことが必要になります。聖司は職人という、個性を持つことが必要な生き方を選択したのです。

 雫が見付けたいのは、やはり何かを物理的に得るようなことではありません。周りに流されない、特有の個性を持つ生き方ではないでしょうか。自分から主体的に行動する経験を持つことで、自分特有の世界(個性)を持つことです。
 この生き方から得られるものは、他の人を惹きつける後天的な魅力、輝き、人間性です。雫は、何ならば自分に個性を持つことが出来るのかを考えているのです。

 この周りと違う生き方は恐れる必要はありません。失敗の経験は全て成功への糸口となり、挫折も一時的でしかありません。
 ただ、やりたくないことを無理に選び、生きて行くことはあまり経験にはならないと思います。やりたくないことの場合、どうしても一生懸命にはなれませんし反省もしません。すべてが中途半端になり人生自体が挫折します。

 ちょっとわき道にそれますが、現代の日本では、多くの人は他人に責任を押し付け楽に生活しています。政治がなっていないといいながら、自分は立候補もせず、選挙にも行きません。教育責任は学校に押し付けながら、自分の子供は散々甘やかし、好き放題させています。
 主体的に生き、自分の個性を確立できれば、何が正しく、何が間違っているかを自分なりに判断できる能力も得られるのではないでしょうか。


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(C) Ryoukan