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4.雫の苦悩〜エンディング

(2008/06/10 一部訂正)
このコーナーは製作者の主観による解釈です。あくまで参考程度に受け取ってください。
本当は、あなた自身の感じる解釈が一番正しいのですから。

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イバラード (1999/05/04)

 「私といいなずけのルイーゼは、遠い異国の街に生まれた。その街にはまだ魔法が生きていて、魔法使いの血を引く職人たちが工房を連ねていた。私たちを作ったのは、見習の貧しい人形作りだった。しかし、ルイーゼと私は幸せだった。彼が人を愛する想いを込めてくれたから。ところが・・・」

 このシーンに出て来る人形作りは、聖司の姿とダブります。雫が創造する物語ですから、当然のように聖司の姿が思い浮かんだのでしょう。
 雫の作る「耳をすませば」の話は、バロンと共に旅に出て、ギャングに奪われたルイーゼを探す話のようです。
 この話の流れは、そのまま雫の状況を反映したものとも思えます。つまり、ようやく恋人同士になれた聖司と雫が、進路に向かって進むという試練により、離ればなれになってしまい、再び再会するべく頑張るということです。

 イバラードの世界は、「身近な風景を想像力の眼鏡を通して見た世界」だそうです。雫が、直面している現実を、想像力を働かせて、物語の世界に仕上げるということは、そのままイバラードの世界につながります。

雫の挑戦 (1999/05/04)

 雫は、授業に集中できず物語を考え続け、先生に呼ばれても気がつきません。
夕子は、雫を心配します。「雫、この頃ボーっとしてること多いよ」
雫は、なんてことないと答えますが、食欲がないとお弁当を残します。

家に帰るとすぐに自分の部屋にこもり、執筆を続けます。カレンダーには毎日×印をつけています。
母親が帰ってきて、洗濯物も取り込んでいないと文句を言われると、怒ってふすまを閉めてしまいます。
夕食も食べずに執筆を続けますが、ストーリーがうまく進まないのか、頭を抱え込んでしまいます。言葉すら上手に出てこないのでしょう。

 雫は、毎日時間がないと焦っているようです。この時が一番辛い時、時間がないのに、自分の未熟さからまったく先へ進めない。最初からうまくいくはずがないとわかっていても、やっぱり辛いものです。
しかし、この悩んだ時間は大きな宝物になるはずです。自分に何が足りず、これから何をすれば良いかがわかるからです。

家族との対立 (1999/05/04)

母親が学校に呼び出され、雫の成績が下がっていることで指導を受けます。雫が毎日部屋で何かをしていることは知っていても、何をしているのかわからないために、母朝子は不安いっぱいです。

そんな時、姉の汐は家を出て一人暮しをすると言いました。朝子は汐の突然の告白にも驚きましたが、苦労させたからと、了解しました。汐は、家を出ることで雫が勉強に集中できるのでは、と言います。2人とも、近頃の雫の様子がおかしいことを気にかけます。

 夜、家に帰った雫と汐は喧嘩を始めます。雫は自分がやっていることを言いたくありません、汐に問い詰められ、いよいよ白状しようかという時に、父が帰って来ました。

雫は父に呼ばれました。
父は「雫がやっていることは、勉強より大切なことなのか」と、問い掛けると、雫はうなずきます。
雫の決心が固いと見た父は、問い詰めずに少し考え、「雫のさせたいようにさせようか」と言い、「人と違うやり方は、しんどいぞ。何が起きても誰のせいにも出来ないからね」と、忠告しました。

 この家庭は、自己責任主義で、自分のことは自分で考えるという基本がここにも流れています。姉の汐は色々と干渉したがりますが、親は二人とも心配はしていても言葉には出しません。
親は二人とも、自分で考える道を歩んできて、それが自分のためになったということをわかっているようです。
自分で考え道を歩んできたことは、母朝子の「そりゃ、私だって身に覚えの一つや二つあるけれど」という言葉と、父の本職「郷土研究家」という職業からもわかります。

家族は、雫が自分で考え道を歩んでいることを確認したことで、大丈夫だと思い、雫の思う通りの道を進ませたと思われます。

さて、姉の汐はここで引越しを打ち明けます。雫にとって、うるさいながらも自分を心配しいつも側にいた姉、いつもいるはずの姉が居なくなる。これからは、本当に何があっても自分一人の闘いであることが端的に示されています。
その後の場面、居なくなった後の部屋の寒々しい雰囲気はなんともいえません。心のよりどころを失ったような雰囲気があります。

迷いの森 (1999/05/04)

雫は走ります。宝石を求めて。
バロンは言います、「早く、早く、本物はひとつだけだ。早く、早く」
雫は光る宝石をひとつ手に取ります。しかしすぐに色はあせ、鳥の雛の死骸に変わってしまいます

目を覚ますと、本を開き、牢獄でバイオリンを作る版画を見ます。そして、その版画は聖司の頑張る姿とだぶりました。

この場面もまた、雫の辛い気持ちを映しています。いくら頑張っても先へ進めずにあせりばかりが出てきます。そして、死んだ小鳥の姿は、そのまま雫の気持ちにあるネガティブな気持ちを表しているように思えます。自分の才能はまったくダメで、この死んだ小鳥のように才能もまた開かないのではないかと・・・。

そんな時に目が覚め版画をみました。版画は雫にとって励みになっているようです。いつも見ているのか、すぐにそのページを開きました。
版画をみると、その絵は聖司の姿とダブり、聖司も頑張っているんだと思って自分も頑張るようです。

西老人の夢 (1999/05/04)

ドアを開くと、そこには西老人の恋人ルイーゼがいました。黄金の光に照らされ、ルイーゼは西老人に近寄ってきました。西老人が手をつなごうとすると、暖炉のまきが折れ、西老人は目がさめました。

このシーンは、西老人が「死んだか?」と観ている人を驚かせませすが、実は何てことない場面で思わずびっくりさせられます。
ルイーゼが西老人に近づいてきて二人が再会する夢は、予知夢のようなものです。西老人の持つ想い出と似た雫の物語が、西老人の家に近づいてくることをあらわします。
雫の物語があまりに西老人の想い出に近かったことで、西老人が夢を見てしまうのではないかと思わせる、とても素敵な場面です。

そして、バロンとルイーゼの関係、西老人とルイーゼの関係、そして西老人の孫聖司と雫の関係、これらには何かのつながりがあるのでは?という物語の中のような世界を想像してしまいます。
もしかしたら、西老人の恋人、ルイーゼの生まれ変わりが雫なのかもしれません。

物語の完成 (1999/06/13)

西老人が目を覚ますと、ふとドアが開きました。そこには、雫の姿がありました。
雫は、物語が完成したと西老人に告げます。西老人は雫の持ってきた物語が大長編であることに驚き、ゆっくり読みたいと言いました。しかし、雫はせっぱつまった様子で、すぐに読んで欲しいと言いました。

遂に雫が物語を完成させました。しかし、試練は終わっていません。最終評価があるのです。
今回の場合、西老人の感想です。
この場面では、その緊張感から雫がいかに真剣に取り組んでいたかが伝わってきます。きっと西老人にも伝わっていると思います。

外で待つ雫 (1999/06/13)

 西老人は、冷え込むからと暖炉のそばにいざないましたが、雫はそれを断り、外で待つと言いました。

 雫は、自分の作品の出来が悪いのを一番良くわかっています。そんな作品を読む西老人のそばにいることは耐えられないと考えたのでしょう。外にでると言いました。外に出た雫は震えています。寒さと不安、、、どちらかと言えば不安いっぱいで震えていたと思います。
 この場面の不安な気持ち、高校受験を思い出します。初めての入試、合格できるだろうか?次の問題がとけるだろうか?とにかく不安だらけの気持ちです。
 どうでもよい気持ちでないから、本気で考えているからこそ、雫も震えていると思います。

西老人の感想 (1999/06/13)

すっかり日も落た頃、扉が開き西老人が現れました。西老人は「とてもよかった」と暖かい感想を述べます。雫は「ほんとうのことを言ってください、後半なんかめちゃくちゃ。自分でわかってるんです。」というと、西老人は全てわかっているようで「そう、荒々しくて素直で未完成で、聖司のヴァイオリンのようだ」と言いました。雫は、思いがけない言葉にとまどいます。西老人はやさしくうなずきました。

西老人は、その文章をみるだけで、雫がいかに頑張って作り上げたかが分かったと思います。西老人は心から「よかった」と言っているようです。

この西老人の感想は、結果が全てでないことを言っています。作る過程が最も重要であると言っています。作る過程には製作者の全ての気持ちが注ぎ込まれています。その人がどんな気持ちで作っているかが伝われば、作ったものは、素晴らしい物になるということです。イバラードの職人の話でも「私達を作ったのは見習いの貧しい職人だった。しかし私達は幸せだった。人を愛する気持ちを込めてくれたから」といわれています。

男爵の想い出 (1999/06/13)

二人は、遅い夕食を食べます。ゆっくりと立ち上る、鍋焼きうどんの湯気は、雫の冷え切った体を温めます。
一通り食べ終わると、西老人はバロンとルイーゼの想い出を語り始めます。
”若い日の留学で、バロンを見付けた。バロンの恋人ルイーゼと、西老人とその恋人との関係。戦争で引き裂かれたそれぞれの二人。”
雫の作った物語と、その想い出は不思議な一致を示しました。西老人は「追憶の中にしかいなかったバロンを、雫さんは希望の物語によみがえらせてくれたんだ。」と言いました。

西老人の想い出と、雫の物語は、不思議な一致を見せました。雫は初めて男爵を見たときに、男爵から何かを感じ取ったのではないでしょうか。西老人が大切にして、数十年も手入れしているその人形に。
そして、ルイーゼの生まれかわりが、雫ではないかというファンタジーの世界が感じられます。

この西老人の想い出を語る場面は、幸せな時間というか、温かい気持ちになれて本当に素敵な場面です。

安堵 (1999/06/13)

西老人は、話を語り終えると、以前雫に見せた原石を雫にプレゼントしました。「その石はあなたにふさわしい。しっかり、自分の物語を書き上げてください。」

雫は、西老人に家の近くまで送ってもらいます。車を降りると、さっきの原石をふと見つめ、走って家に帰ります。家に帰り着いた雫は、母親に受験生に戻ることを告げると、ベットで眠りに入ります。父は、その姿を見て「戦士の休息だな」と一言いうと、布団を掛けてそっと電気を消しました。

父親も、雫がいかに頑張ってきたかが分かっています。雫は本当に安心したのでしょうね、ベット転がるとあっという間に眠ってしまったようです。

西老人は原石をくれましたが、「あなたにふさわしい」という言葉を残しました。自分自身を試し進路を見つけた雫には最もふさわしいと考えたのでしょう。雫にとっては、自分のスタートの象徴でもある原石は、本当に宝物になるプレゼントでした。

夜明け、再会 (1999/08/15)

朝、目が覚めると雫はいつもと違う感覚を覚えました。昨日のままの格好で寝ていたことを知りましたが、特に気にすることもなく窓を開け、外の様子を眺めました。そしてふと下をみると、そこには自転車に乗った少年が一人、なんと聖司の姿がありました。「うそ・・・」と雫は慌てて外に飛び出しました。

「奇跡だ、本当に会えた」聖司はそう言っていくつか事情を説明すると、時間がないからと、雫を自転車に乗せました。

奇跡、偶然、それは運命なのかもしれません。この場面はまさに奇跡です。人生に奇跡や偶然は必要なことです。これがないと先へは進めません。例えば、聞く、本を見る、出会う、全て奇跡や偶然です。
聖司はこの奇跡も先へつなげました。雫を秘密の場所へと誘ったのです。

坂道 (1999/08/15)

二人はひたすら道を走ります。大きなダンプなどいくつもの車が横を通りすぎます。やがて道をまがると、きつい上り坂になりました。雫は降りて聖司を手伝おうとしますが、聖司は「雫を乗せて坂道登るって決めたんだ」と言います。しかし、雫は「お荷物だけなんてヤダ、私だって役に立ちたいんだから」と言って聖司の自転車を押しました。そして二人は無事登りきりました。自転車はそれでも止まることなく、さらに目的地に向かって走りつづけます。

 横を過ぎる大きな車などは障害物、人生の障害物。坂道も人生の困難。でも2人力を合わせて克服して行きます。自転車も止まりません、目的(進路)に向ってひたすら走りつづけます。
 目的を達成する為にパートナーがいると本当に良いものですね。1人で行くと大変なことも2人ならきっと大丈夫?かな。

秘密の場所 (1999/08/15)

やがて、二人は目的地に着きます。聖司は奥の方へ雫を案内しました。そこには朝もやで海のようになった大都市の姿がありました。聖司は「ここ、おれの秘密の場所なんだ」と言います。

やがて、はるか遠くに高層ビルが見える地平線から、太陽が姿をあらわします。
太陽は2人をまぶしく照らし出しました。

その丘の先には未来が開けて見えます。やがて光も射してきます。この場面は2人の未来を暗示しているかのようです。はじめ、朝霧に遮られ街の姿は見えませんが、太陽が昇り街が見えてきます。見えなかった未来が見えるようになって行くのです。

プロポーズ (1999/08/15)

聖司:「俺、、、いますぐってわけにはいかないけど、、、おれと結婚してくれないか」
「おれ、きっと、一人前のヴァイオリン作りになるから・・・。そしたら・・・・」

雫:「うん」

聖司:「ほんとか!?」

雫:「うれしい。そうなれたらいいなって、思ってた」

聖司:「雫、大好きだ!」

 2人は、1つになって歩き始めました。それぞれ、目的を持って別々の目標を持っていますが、きっと助け合いながら進んで行くことでしょう。

 2人にとって、この場所は故郷になりました。これから進んで行く道の原点としての場所です。
いろいろ悩みながらも人生の進路を見付けた場所、お互いを見付けた場所、すべてのはじまりの場所・・・。

エンディングでは「カントリーロード」が流れます。ふたりは歩き始めています。

「さみしさ押し込めて 強い自分を守ってゆこう」
「挫けそうな時だって 決して涙はみせないで」
「帰りたい 帰れない さよなら カントリーロード」

The END

 


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(C) Ryoukan